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サクラ大戦のレニに愛。テキスト中心、イラスト少々。シリアスとギャグ混在ぎみ。初めての方はAbout Meへ
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観月さんに送らせていただいた大レニです。




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この気持ちに気付いてしまいそう。


Marginal










 昨日、無事千秋楽を迎え花組にしばらくぶりの休日が訪れていた。今までの稽古の毎日がまるで嘘みたいに遠い過去のような存在に思えて、稽古のために費やしていたような精神的な領域がぽっかりと穴が空いてしまったような錯覚に思える。
 昨日のこの時間ならば稽古をしていた、と考えながらその手持無沙汰な時間を持て余してレニは中庭のベンチに腰かけた。
「そういえば、おまえと会うのも久しぶりだね…」
 ふと目の前を見ると、舌を出してまるで遊んでほしいと言っているようなフントの姿があった。最近の稽古の毎日でフントと会うことを忘れてしまっていたが、自分のことを忘れずに待っていてくれたようなフントの姿を見てレニはほほ笑む。
 いつもベンチの下に置いているボールを握ると、軽くフントの方へと投げた。フントは待っていたというようにそのボールを追いかける。
「暇だ、って感じなのかな?」
「うん…」
 レニは背後の気配に先ほどから気付いては居たがあえて声をかけるようなことはしなかったが、声を掛けられてその声に答えた。声の主はレニの横へ座るとレニにほほ笑んだ。この劇場の支配人、大神一郎だった。



「毎日毎日やっていたことがなくなって、その時間をどうすればいいのか分からないんだ…アイリスやさくらは買い物に行ったみたいだけど…ボクにはどうすればいいのか分からない」
「レニはレニのままでいいんだよ。無理してついていく必要もないし、敢えて何かやることを見つける必要もない…俺もようやく仕事がひと段落ついて…」
「なら、もっと鏡ちゃんと見れば?」
 レニは大神の頬を撫でるとその「不十分に手入れされた」その様を指摘してほほ笑む。大神は困った顔をして苦笑した。
「本当はまだまだ忙しいくせに、支配人?」



「なんで中庭に出てきたの、まだやらなくちゃいけないこと、たくさんあるんでしょう?かえでさんからいろんな出版社から話が来てるって、聞いた」
「レニが中庭に行くところが見えたからね、少し仕事にきりをつけたら俺も中庭にいこうと思ったんだ」
「……」
 ボールを持ってレニの元に帰ってきたフントからボールを取り上げて、フントを撫でるレニは何も話すことなく、フントの黒い瞳を見つめていた。
「レニともずっと話していなかったことだしね」
「……」
 レニは先ほどよりもずっとずっと強くボールを遠くまで投げた。フントのことなど考えないような強さと向きで、その確かに質量を持ったボールは遠く飛んでいく。ぐっと下を向いて、大神の方を向こうとはしていない。柔らかな彼女の前髪が、彼女の瞳を隠して表情が何も見えなかった。
「……ボクを調子に乗らせないで」
「え?」



「そんなことを言われるとボクはどうすればいいか分からなくなる…ボクが隊長を独り占めしてもいいって錯覚になるから」
「レニ…」
「少しでも近くに居たいって思う、ずっと隊長のことを見てしまう」
 レニは隣に座る大神の胸元のブラウスを握って大神を見つめた。その顔は無表情に大神を見つめているだけだった。
「でもそうしてると、気づいてしまいそうなんだ。ボクが…隊長をどうしてしまいたのか。一緒にいることで、見ていることでボクは気づいてしまいそう。無意識の内にしているから、いつ気づくのか分からない」
「……」
「そんな少しでも傾いたらあふれ出してしまいそうな、中間地点にいる。…これ以上どうしたらいいのか分からないんだ」
 その握っている手に力を入れて、大神の顔を自分へと近づける。



「隊長、ボクは隊長のことが好きだよ。…そんなことは自分でも分かっている話、でもどうしてこんなに苦しいの。アイリスやフントのことも大好きなのに…どうしてこんなに違うの?どうして…自分の気持ちばかり優先してしまいたくなるような、そんな気持ちになるの?」
 大神はレニの頬を優しく撫ぜるとレニは瞬間に表情を固くして、俯く。柔らかな薔薇色の唇を人差し指で触れるとびくりと大きく身体が震えた。
「気付いてしまっても、いいんだよ」
「でも…ボクは…」
「俺が気づかせては駄目かい?」
 ブラウスの手の力を抜いて、自分の膝の上で力強く握った。何かに耐えるように、レニは小さく震えていた。
「…気づいてるんだと、思う……」
 大神はレニの顔を上に向かせると、優しく微笑みかける。
「言ってごらん?全部、俺が聞いてあげるから」
「ボク…は…っ」
 震えるレニの手を優しく包み込むように大神は握る。
「隊長、ボク、は…」
 倒れこむように大神の胸に凭れかかると、大神の耳元で小さく震える声で大神に想いを告げる。

「わがままだけど、聞いて…」



「ボクは隊長が好き、離れてほしくなくて、遠くにいきたくなくて、嫌いになってほしくなくて」
 体の震えが大神に確かに伝わってきて、大神は何も言わずにただレニの髪の毛をなでる。
「俺はレニのことが好きだよ、だから心配しないで」
「だから…っ」



「ボクのこと、好きになって…、嫌いになんてならないで。もっと、ボクを好きになって。ボクが隊長を好きなくらい、誰よりも…」
「わがままなんかじゃないよ、俺だって同じ気持ちだから、心配しないで」
 レニの耳元で囁くように呟いた。

「呆れるくらいに君を好きになってあげる」


Fin.
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