ハイカラ・ポスタァ３（マリかえ）

ハイカラ・ポスタァ：３

「でもそんな話題になってるモデルはんって、誰やろな？相当なべっぴんはんなんやろうなぁ」
　紅蘭がふと呟いた。花組のほとんどが大神を非難していた訳だが、その紅蘭の言葉のように思っているのは全員確かである。
「アイリス、そのポスタア見てみたいっ！」
　全員の心の内を代弁した、アイリスの台詞だった。

　大神の聞いた噂や、最近の雑誌の特集などからそのポスタアがどこに貼られているのか花組が思案していると、大神が批難されている途中で客から呼び出されていたというかえでが楽屋へと戻ってきた。
「何を考えてるの、みんなして。さっきまではあんなに大神くんがみんなからの攻撃を受けてたのに」
「あはは…」
　にっこりとほほ笑みながら傷をつつくかえでに、大神は顔を引きつらせながら微笑むだけだった。
「噂のポスタアをみんなで見に行こうって話になったんです」
「噂のポスタア？それってどこのポスタアのこと？」
「今みんなからの意見を出した結果、メトロの傍の“びいどろ”ってお店である確率が高い。人通りが多い場所だし、いつもそのお店には…」
　さああ、っとかえでの顔が真っ青になる。
「どうしたんだよ、かえでさん！なんかあったのか？」
「え、え？な、なんでもないわよっ…！ただそこのお店には若手だかなんだか知らないけど私の苦手な女流小説家がよく行っててね…」
　顔を真っ青にしたかえでを心配してカンナが声をかけるが、かえでは苦笑いを浮かべながらその理由を答える。
「そうなんですか。じゃあそういうことなら、今度私たちだけでその美容室に行ってきます」
「え、みんなでそのお店に行くの！？やめた方がいいわよ！」
「なんでなんで！？ただ見にいくだけだもんっ、お店に入るわけじゃないんだよ？」
「そ、そう、だけど…」
「あ、あたしたちも公演がありますし、すぐに帰ってきますよ！そんなに遠い場所じゃありませんし、息抜きにいく位で…」
「で、も…」
「ははーん、かえではん、なんかうちらに隠し事してるやろ？その美容院で何かかえではんにあったんやな？」
「え、ええっ！？そんなこと…ないわよっ！あ、ああ、その女流作家とね、すっごーく嫌な思い出があるから、そのトラウマって言うのかしらね…」
「でも…そこまで否定する必要なんてないんじゃねぇの？あたいたちはただ行くだけなんだぜ？」
「ただポスタアを見てくるだけ…ボクたちがその女流作家に会う可能性は限りなくゼロに近い」
「もういいわよっ、ただ私が苦手なだけなんだからっ！！」
　かえでは真っ青だった顔色を一変、真赤にさせて楽屋を出て行った。明らかに不自然すぎる反応に花組の面々は顔を見合せて首をかしげるだけであった。