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サクラ大戦のレニに愛。テキスト中心、イラスト少々。シリアスとギャグ混在ぎみ。初めての方はAbout Meへ
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とても珍しい、女性役。



チョコレートがあれば生きて行けるわ




 女性役が不足してか何故だかは詳しくは分からないけど、ただ、それだけの話。
 ボクもマリアもカンナも男性の役はあるけど、ボクにはもう一人女性の役がまわってきた。もちろん一人二役な訳だから、どちらもそこまで出番が多いわけではない。ただ足りない分を補おうと思うと、マリアやカンナではイメージを損ねてしまう可能性があったからボクにまわってきたのだろうと思う。
 大富豪の娘。ほんの一瞬の出番で、少しわがままで可愛らしい少女の役。
 本来ならばこのような少女の役はアイリスに適役だけど、アイリスは同時に違う少女として舞台の上に立っていなくてはならないためにアイリスが演じることはできない。つまりアイリスと背格好が一番近くて少女として舞台の上に立てるのはボクだという考えのもとで、ボクにこの役がまわってきたのだと思う。
「あら、お父様。わたくしにあのお人形をくれるって、約束してくれたでしょう?わたくし、とっても楽しみにしているのよ」
 手に抱えたテディベアを強く抱きしめる。

……ああ、なんて自分に似合わない役だ。とりあえずト書きにそってアイリスから借りたジャンポールを代わりに強く抱きしめた。

「ねえお父様、約束してくれたじゃない!そのお人形をわたくしにも買ってくれる、って!あの子が持ってるのに、どうしてわたくしは持つことができないの?納得ができないの」
 目の前の少女を指差す…つまりアイリス。
「ねえ他には何もいらないのよ、言ったじゃない。お人形が、何よりも欲しいんだって」
 回を重ねれば重ねるほど、役を軽蔑していくなんて初めてだ。


「……」
「……」
「……で、どう?こんな感じなんだけど」
「…あ、いや、いいと思うよレニ」
「う、うん…」
「なんで二人ともそんなにうろたえてるの」
「え?あ…えーっとね…」
「そ、そうだな…」
 レニの稽古を見ていた大神とアイリスは何故か困ったような顔をしてレニの問いに答えた。レニは訝しくそれを見て、その理由を尋ねる。
「レニとあまりにも違いすぎてなんだか、ね…演技は全然問題ないよ」
「いつものレニとぜーんぜん違うんだもん!アイリスびっくりしちゃったぁ!だって一番最初に台本を読んだときからレニがやるなんて信じられなかったけど、これなら全然大丈夫だね!」
「…了解」
 演じることも不本意だし、反応も不本意なものだった。

 稽古は終わり夕食やシャワーも済ませレニは自室に帰ってくると机の上に置かれた淡い水色の包み紙に目を向けた。
 淡い水色の包み紙、青のリボンで飾られたそれは先日彼女が大神からもらったものだ。
 どうやってチョコを作るのか、どこで美味しいチョコを買えるのか。そんな知識を持ち合わせていない彼女が試行錯誤を重ね出来上がったチョコレートを大神に渡した。これはバレンタインデーという日本が製菓会社によって半分しくまれているイベントである。これに対し、お返しを渡すという日をその1ヶ月後であるホワイトデーという。
 そのホワイトデーの波に飛び込んできたのが、この開封されることなく机の上に置かれている淡い水色の包み紙である。
「……」
 レニはその青いリボンを指で触れた。大神からもらったまま、何も変わりのない結び目は彼女の目には開かせようと魅了するものではなかった。
世の女性ならば、好きな男性からもらったプレゼントは部屋に戻ったら急いで包み紙を破らぬよう、丁寧に、急いで開いて中身を確かめるものなのだろう。しかし彼女にそのような気が起こらなかったのである。
「……」
 包み紙を机の奥へと追いやって、椅子へと腰掛けた。花組の写る写真を眺めて、レニはため息をついた。

 この包み紙は隊長のくれたもの。
 ボクにくれたもの。
 …みんなと、同じように。

 花組は全員日ごろの感謝の気持ちを込めてバレンタインに全員が大神に贈っている。大神はその全部に丁寧にホワイトデーにお返しをしたのだった。そのお返しは包み紙の色は違えど、サイズは同じで一見して同じものなのだということが分かった。
「……」
 台本でも確認しようと、机の引き出しを開けて台本を取り出そうとした。

 ドアが静かにノックされた。この時間は、隊長の見回りの時間だ。
「どうぞ」
 丁寧にドアが開かれた先には予想通り大神がいた。
 目の前の包みは開かれぬまま。贈り主はいつものように部屋に来た。

「異常はないかい?」
「うん。特に、異常なし」
「あ、そうだ…」
 大神がレニの部屋に入ってくると、レニへと一冊の本を差し出した。
「台本を稽古のときに忘れてたよ、珍しいねレニが忘れ物なんて」
「あ…ありがとう…」

 開いていない包み紙の中にあるのは、今銀座の街で流行しているブランドのチョコレートだっていうことは分かってる。さくらやアイリスがそう言っていたから。
 だから、ボクもそのチョコレートをもらってる。包み紙を開いてはいないけど。

「じゃあ隊長。一回ボクの練習を確認していってくれない?」
「ああ、構わないよ」

 ボクと同じように、花組のみんなも隊長が好きで、
 感謝しているってことも分かってる。
 それでも…ボクは自惚れていたんだって、そう、愕然とした。
 たまにぎゅっと抱きしめてくれるのも、優しくキスしてくれるのも
 ただ、それだけ。

 ホワイトデーなんて、何も関係ない。

「あら、お父様。わたくしにあれをくれるって、約束してくれたでしょう?わたくし、とっても楽しみにしているのよ」
 目の前の少女が持っているものに羨望の眼差しを向け、同じものを自分も得たいという独占欲。
「ねえお父様、約束してくれたじゃない!わたくしにも買ってくれる、って!あの子が持ってるのに、どうしてわたくしは持つことができないの?納得ができないの」
 目の前の少女を指差す…つまりアイリス。アイリスがその手に持つもの。
「ねえ他には何もいらないのよ、言ったじゃない」



「チョコレート…チョコレートがあれば生きていけるわ」
 大神ははっとして、レニを見つめた。


 何という…汚いあてつけだ……





つづくかも。


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つづくかもしんない。
タイトル先行。しかもタイトルはただの歌詞。
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