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サクラ大戦のレニに愛。テキスト中心、イラスト少々。シリアスとギャグ混在ぎみ。初めての方はAbout Meへ
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謳歌絢爛 Spin-Off



~螺旋・軌跡、微小時間~


 ふと、心配になってしまう。自分は先ほどの要望にこたえられるのか。



 マリアが先ほど「光武をチェックしてほしい」と自分に頼んだのだ。きっと彼女は分かっている。光武を自分は今まで通り動かせていないのだ、ということを。

 幸いながら、平和になったこの帝都で花組が出撃する回数は格段に減った。そのせいで花組全体の緊張感が下がっているといえば否定できないかもしれないが、彼女は違う。彼女は日々の生活の中からきっとすべてを感じてしまっている。自分の霊力が空気を波立たせるのを、そしてその波が弱まってきたことを。

 隠すべきか、隠さざるべきなのだろうか。…まだ伝えるべきではないと思う、たとえ本人が分かっていたとしても。
少なくとも、この公演が終わるまでは。マリアを絶望の淵に立たせるべきではない。



 しかし、本当に光武は彼女の霊力に見合った力を出してくれるだろうか。

 もしかしたら、彼女の少し低下してしまった霊力でも動かなくなってしまっているのではないか…。

 余計な不安だけが、紅蘭の頭の中を駆け巡っている。




「紅蘭、別に私はあなたのことを責めるわけじゃないわ。でも…どうしてこんなことに…?」

「そ、それは…!」

 一昨日、かえでに花やしきに提出する書類を見せたときのことだった。紅蘭は定期的に花やしき支部に全員分の公武の細かい状態や整備方法を送り続けている。ただ、その記入されている光武の状態の悪化が顕著であったのだ。機動から最大の力を出せるまでの時間、操縦者の操作による光武の動作までの遅延、霊力の変換率。すべてが上がることなく下がり続けている。

「たぶん、パーツの問題やと思います」

「パーツの問題?どういうこと?」



「光武のパーツにはいくつか毎回変える必要のあるパーツがあります。そのパーツはもちろん光武用のものとは限らへん。その辺の店で売ってるようなものもたくさんある…そのパーツは、今電気が普及してきたことに合わせて電気で動かしやすいパーツになってるんや…」

「蒸気で動かす光武には不向き、ということね」

「それに、一般家庭にも今は電気と蒸気と供給されとる。効率の良い電気の方が最近は供給される量が増えてきて、蒸気の供給される量が不安定なんや…」

「…光武に電気を対応させることはできないの?」

「それは…無理な話や…電気なんか無かった時代に設計されたものを土台として作ってるわけやから、全然構造から何もかも違います」

 かえでも紅蘭が話したいことは全て分かっているようだったが、その表情は納得しているというものでは無かった。

 彼女は技術者ではない、帝都に住む人々を守るのが彼女の役目であり、すべてはこれを満たす最善を尽くさなくてはならない。

 今回のことは、この最善から遠く離れてしまっているものである。

 かえでははぁ、と一つ、ため息をついた。



「このままでは、私たちが華撃団として存在する必要性が認められなくなってしまうわ」

「な、なんやて…!」

「私たちの霊力はいつか尽きる。でも、それより以前に人型蒸気が動かなくなってしまっては、もしものときに対応することができない。光武を整備するのだって、この国の税金から来てるのよ」

「で、でもそんな…!」

「私たちはいろんな人から期待されているわ、もちろん帝都の人々にもね。その人たちから頂いたお金をすべて無駄にしているのだとしたら」

「う、うちっ…無駄になんかしてへんっ!ちゃんと整備も研究も欠かさず…!!」

「紅蘭が悪いわけじゃないわ。…紅蘭が全力を注いでいるのは私も分かってる、でもそれが何も実を結ばないのなら、やる必要だって…」

「そんなんじゃないっ…うち頑張るから…っ!出来るだけ落ちひんようにする、だからかえではん…この子たちは…」

“何も悪くない”


「見捨てんで…!」





 もしかしたら、今回の光武のチェックでさえも、今まで通り行えないかもしれない。アイリス程の霊力の持ち主でも動かせないかもしれない…そんな不安が紅蘭の胸にもやもやと広がっていた。

 自分が格納庫まで先導しているわけだが、ちゃんとチェックができるのだろうか。背後にも、違う理由でどんよりとした、虚しい雰囲気がある。それを払拭できるような結果が出せるだろうか…


 格納庫についた二人はまず紅蘭がマリアに光武に乗るよう促し、彼女自身は光武の現在の霊力状態を確認していた。


 嫌でもマリア機の日々のチェックされた結果が書かれた書類が目に入る。相変わらず右肩下がり。

 そんなことに集中するべきではないとは分かっているが、目が離せなくなる。見ていたところで違う結果になるはずもないのに。



 そんな状態からふとパネルに目を移す。マリアの霊力は、まだ光武を駆動させるための霊力値を上回っていた。


 良かった…

 安堵してしまう。

 マリアが気にしていた霊力値は、彼女の思っていた通りに低い値を示していたとしても、紅蘭にはそれどころでは無かった。



「そうやな…先月と比べるとだいぶ落ちとるな。でもマリアはんには霊力に関して余裕があるからまだ大丈夫やで。たぶん気分による上下か誤差やろ」

 光武の性能は、刻一刻と下がってゆく。


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