拍手再録：いたづら（モトホシ）

とても珍しいこと。
なぜか、わたしのベッドでレニが寝ていること。


いたづら

　昨日の夜に私がさんっざん話に付き合わせたせいで（かえでさんはあーだとか、マリアさんはこーだとか、そんな話でーす）
　朝からうつらうつらしていた（らしいです）
　レニがついにわたしのベッドで眠っていたのです。
　わたしが楽屋に置いてあるメイク道具の質が悪いのだとせっかく語ってあげたのに、レニも人の話を聞かずに居眠りだなんて、そーとー、ず重いってヤツでーす！！
　ま、わたしのベッドで横になれば眠ってしまうのもしょうがないので許してあげますけどね（やっぱり最高級のシーツは違うのですよ）

　すーすーと小さな寝息を立てて眠っているレニの耳元をふと見ると、小さな金色のピアスがついていた。いつもは前髪で隠れて見えなかったり、白いピアスをつけているために見えにくかったりと、彼女がピアスをしていることを知らない人は多い。しかし織姫が初めて彼女に出会ったときから、彼女がピアスをしていたことは確かである。
　必要最低限のことを求めるレニからすればピアスホールをあけることは無駄なことだととらえるのではと思っていたが、なぜかずっとピアスをつけているレニにつけている理由を尋ねると
「用意された衣装を無駄にしたくないから。その予防」
と冷淡に返されてしまったのだった。
　彼女にとってのピアスとは、お洒落ではなく舞台衣装の一つなのだった。

　真っ白な耳たぶを指でなぞると、くすぐったいと言うように曇った声を上げる。そんな彼女にふふ、とほほ笑むと織姫はそのピアスに触れた。
―――確かもう、既に紅蜥蜴のときには持っていた気がする。
　レニの熱がすっかり移ってしまったそのピアスはもう生ぬるい。昼の温かい日の光を鈍く反射させていた。

　織姫は思い立って、自分のドレッサーのアクセサリーの入った箱を開けた。そこには織姫自身のアクセサリーが数えきれないほどに入っていた。地味なものから豪奢なものまで、さまざまあるがすべて一級品のものであることは間違いない。
　その中から一つ、赤い小さな薔薇のピアスを取り出した。

　レニを起こさないよう、静かにレニのピアスを外すと、小さなピアスホールに軽く口づけて、自分のお気に入りの薔薇のピアスをつけた。人にピアスをつけるというのは見た目以上に怖いことであるが、彼女は難なくこなした。
　普段寒色系のものを身につけることが多いレニにとって、その薔薇のピアスはすこし浮いている。それでも織姫は、レニが自分のものを身につけているのだと思い、くすりとほほ笑んだ。
　お世辞にも似合うなんて言えないピアスは、寝息を立てているレニの耳元を静かに彩っていた。


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一番最初の織姫視点のような文章を書くのは今でも大好きです。
マリかえでもそうでしたが、実は（）に自分自身で言ったことに突っ込みをいれるという感じですね。
それとたぶんこれが一番初めのレニのピアス設定かと。
まだ私がピアス開けてなかった時代ですね、ほえー