謳歌絢爛４

謳歌絢爛４
～舞台袖にて・受難～

　舞台の上で三人が演技を繰り広げているとき、公子役の女性、花組の男役トップスタアのマリア・タチバナが舞台袖に入ってくると二人の女性がそこにいたが、そのうちの片方はとても焦った様子で台本と蒸気系統のパネルを見比べていた。

「おつかれ、マリア」

「ええ、カンナももうじき出番ね。…どうしたの、紅蘭」

「あ、マリアはん」

「あなたももう少しで出番でしょう、そろそろ準備しないとまずいわ」

　紅蘭と呼ばれた女性は横に首を振った。

「そんな訳には行きまへん。直前まで見てへんと、心配なんや。新しいライト、あれはえらいエネルギーがいる造りでな、下手すると暴走してしまう可能性もあるんや」

「でも…もうさくらたちがはけるわ。ほら、紅蘭！」

　もう一人の女性、赤鮫役のカンナが紅蘭の肩に手をおく。

「ほら、あたいが見といてやるからよ。紅蘭は舞台に行きなよ」

「あわわ、今いきます！…ありがとう、カンナはん」

　舞台上の三人が完全にはけたところで、二人は舞台へ向かった。

 

　同時刻、舞台袖にて。

　鎧の少女が持っていた槍を支えにして床にしゃがみ込んだ。

「レニ！大丈夫なの、顔が真っ青よ」

　桃色の着物を着た女性が竜の乗り物から降りると、レニと呼んだ少女に駆け寄った。

「大丈夫。ボクの出番はもうほとんどないし歌もないから…」

「今は…カンナさんの赤鮫のシーンね、マリアさんとカンナさんたちのシーンが終わるまで時間があるわ。レニ、そこの椅子で休むといいわ」

「ありがとう、さくら」

「レニ、あなたまさか…」

　さくらがレニの手を取り椅子に座らせると、紫色の着物の女性がレニに近寄った。

「かえでさん…大丈夫だよ、どうってことない。さくらもかえでさんもまだ出番は多い。ボクのことなんて気にしないで」

「レニ…」