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サクラ大戦のレニに愛。テキスト中心、イラスト少々。シリアスとギャグ混在ぎみ。初めての方はAbout Meへ
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無駄に分からない方向に手を出しても、分からないものは分からないのです。
経済ってよく分からない。
ついでに、化学はカリキュラムのために普通科高校生の半分ほどしか習ってないと思われます。
ちなみにカリキュラムのために高校生レベルに達していないものは
・音楽
・美術
・英語
・国語
カリキュラムのために、数学はなぜか高校で3年間かけるものを2年間でやったりと。
関係のない話になってきたので終わるです。



ミルキーウェイ・4
ープレゼント・フォー・ユウー


「さすが欧州のスター…プレゼントのレベルもすごいわね…」
 帝劇の男役トップのマリアも驚くプレゼントが楽屋で化粧をしていたレニの元に届いた。
「こんなの日本じゃ手に入らねぇよな」
「というよりも…レニの為に作られたものじゃないでしょうか?」
「……私は帝劇に来る前からほとんどが男役。こんなもの、貰ったことはない」
 豪華なドレスに髪飾り、指輪や靴…どれも一級品であることは人目で分かる。全てレニの瞳の色の青で揃えられており、上品な光沢を湛えたシルクや、見たこともないくらい大きなサファイアがふんだんに用いられている。
「きっとポスターや。レニの天使の写真を見た送り主はんがポスターを見て、女モンの服着たレニの姿を見てみたい思ったんやろな」
「すごいよレニ!!着てみないの?」
「じゃ、じゃあ時間もまだあるし…一度着て見るよ」
 レニは届けられたプレゼント一式を抱え、楽屋の隅に備えられた更衣スペースに足を運ぶ。プレゼントが入れられていた箱の隅に目を向けると「永遠の愛を今宵も僕の『天の川』へ、エーリッヒ・シュヴァルツ」と書かれており、レニは無意識のうちに「またか」と呟いてその服に身を通し始めた。
 エーリッヒ・シュヴァルツ、彼女が8歳の頃に欧州で衝撃のデビューを果たしたときから彼女は彼からの手紙を受け取っていると記憶している。ドイツでは現在一番力のある貴族で、その名前から取って黒の貴族と呼ばれている。シュヴァルツ卿は以前から彼女にファンレターとは思えないほどの熱い内容の手紙と、貴族で無ければ見ることも出来ないような宝石や貴金属などを贈っていた。大体去年のクリスマス公演が終わった頃には遂に結婚して欲しいと言った内容の手紙が届いたりしたものだ。その時には彼女もその気持ちに答えることはできない、と書いた手紙を送り返したのだが、一向にその贈り物が減ることはなかった。
 そして遂に送られてきたのはドレス…今まで送られてきた宝石や貴金属とは違い、大きくあからさまに自分を女として、思い、送る品物だった。
 
「よく似合ってるよ~レニ!」
「あ…ありがとう。でも私には少し派手すぎて、少し恥ずかしいかも」
「綺麗よ、レニ。それにしても…ものすごく豪華なドレスね。それにサイズもピッタリだし…」
 マリアが側に寄って、レニの癖っ毛の髪を整えるように撫で付けた。するとレニはプレゼントを貰ったというのに少し浮かない顔をして
「いつも、私は見られているから」
「いつも…見られてる?」
「私が欧州でデビューしたころから、いつもステージに上がる度に嫌な視線を感じた。ずっと見られてるような気がするんだ…特に去年のクリスマスの辺りから、ずっと…」
『みんな大丈夫かい?お客様をつれてきたよ』
 その時、楽屋のドアがノックされ、大神の声が聞こえた。
 
「どうぞ、支配人」
 マリアが返答し、一息を着く間もなく勢い良く楽屋のドアが開け放たれた。そこで入ってきたのは、花組の面々が良く見慣れた顔だった。
「オーホッホッホッ、お久しぶりですわ、みなさん。永遠の帝劇のトップスタア・神崎すみれですわよ!」
「おっひさしぶりでーす!欧州のトップスターのソレッタ・織姫が、暇を編んで来てやったでーす!」
「あぁ~もうサボテン女!お前はもうトップスタアじゃなくて神崎重工の跡取りだろ!こんなことしてる暇あんのかよ?!」
「ホッホッホッ…カンナさん。それは違いましてよ。世界に輝く神崎重工と言えど、労働力はもちろん人間…この聖なる夜、クリスマスイブに夜中まで無理に働かせようなんて思っていませんわ。今神崎重工の社員はみーんな家に帰らせましたの」
「すみれはんもなかなかイキなことしますなぁ。で、行く所もないから帝劇に来たんか?」
「い、行くところがないですってぇ!?私はこのカンナさんがクリスマス公演間際に食い倒れていないか確認しに来てさしあげただけですわ!」
「なっなんだとこのサボテン女!!」
「レニ~お久しぶりでーす!!どうしてそんな可愛い服着てるんですか?レニ、いつからそんな女の子の趣味になっちゃったんですか?それならワタシがいつでもレニに…」
「私の趣味じゃない。機能的じゃないからいらない。これはただのプレゼントだ」
「あっそーですか。残念でーす。…でもなんてゆーか、ものすっごい豪華なドレスですね~ワタシでもこんな高そうなドレスあんまり見たことないです」
「そうなんですけど…さっきからレニ、あまり嬉しそうじゃなくて……」
「送り主は誰なんですか?もしかしてレニ、送り主が嫌いだとか…まぁ、レニが好きも嫌いも」
「うん、嫌い」
 さくらがお化粧道具を派手に落とし、マリアが書類を書いていたペンを落とし、アイリスがジャンポールを落とし、紅蘭が作っている装置を落とし、カンナが食べていたどら焼きを落とし、すみれが啜っていたコーヒーカップを落とし、織姫はその場に固まった。その場の雰囲気をガラリと変えた本人は何事も無かったかのように織姫の顔を覗き込む。
「どうしたの?織姫」
「れっ、レニが人を嫌いになるなんて珍しいですねー…で、誰なんですか?」
「シュヴァルツ卿だよ」
「シュヴァルツ卿って…あの黒の貴族ですか!?確か星組時代からレニにつきまとっていた…まだレニのこと諦めていなかったんですか、あの男…」
「しゅばるつきょう…?誰のこと?」
「名前なら聞いたことがあるわ。ドイツの医療品を扱うビジネスで一気に財界にその名を知らしめたゲオルグ・シュヴァルツから始まって…現在は確かエーリッヒ・シュヴァルツという人物が権力を握ってると言われているわね」
「そのエーリッヒとかいう男でーす!レニに付きまとってるヤツは!!ワタシもママと一緒に会ったことがありますが、んもぅイヤなヤツでした!!ドイツの誇り高き血がどうとか、野蛮な猿とか、ああいう男、大ッキライでーす!!」
「ははぁ…ドイツ史上主義者っちゅーこっちゃな。しかも今やシュヴァルツ・カンパニーは世界に影響力を持つ世界でも指折りのでっかい会社や。やっかいやで」
「確かにあのエーリッヒというお方…私もお会いしたことがありますが、とてもじゃありませんがお話になりませんでしたわ。私がアジア人、ましてや日本人だと知った途端に手のひらを返すように今までの商談を無かったことにしろと…」
「あたしゃそういう世界は全く知らないから理解できねぇんだけどよ、そんなに人種とか国とかって関係あるものなのか?あたいたちはみんな国が違うけどさ、こうやって一つ屋根の下で平和に暮らしてるじゃねえか」
「カンナが言う平和な暮らしができるケースは極めて少ない。特に今欧州では欧州大戦以降、人種や国に関しては敏感になってるんだ。欧州大戦で大敗したドイツにとって、シュヴァルツ・カンパニーは希望の光…もしもエーリッヒが国外の女性と結婚、ましてや違う人種の女性となれば国民への裏切りとなり、国内の女性と結婚すれば更なる光となる。シュヴァルツ・カンパニーは世界中の医療品をほぼ独占状態にしているわけだから、このままいけば大きくなる一方…より純粋なドイツ人が世界でのドイツの力を高めるということは、今最悪のインフレ状態にあるドイツ最大の望みなんだ」
「インフレとかアイリス難しい話よく分かんない」
「どちらにせよ、エーリッヒはドイツ人としか結婚する気がないんだ。そしてかつて世界三大劇場一人三役ツアーを行なった欧州のスター、ソレッタ・織姫に匹敵する知名度を持つ私と結婚することが、ドイツ国民への最大の朗報だと信じて疑わない」
「それって…レニのことなんでどうなっちゃってもよくて…国のことしか考えてないってこと…?」
「ひどい…レニにだって心はあるのに…まるでレニを道具だと思ってるみたい」
「ワタシ、言われたんです。『世界三大劇場一人三役ツアーのソレッタ・織姫と言えど、私の国のレニ・ミルヒシュトラーセには敵わない。我が祖国の彼女こそ欧州のトップスターだ』って。レニはワタシと演奏する楽器もオペラの声域も違いますから、まず比較対象になりませんが、レニに負けることは構いません。ワタシはレニを認めていますし、レニの方が好みならそれでいいのです。でもアイツはレニだからではなく、まるでドイツだからレニの方が優れているみたいなことを言うんです…それが納得できませーん!」
「私は実際孤児だったから国籍すら分からないし、もしかしたら欧州出身でもないかもしれない。家柄が良い悪いという問題でもない。ただシュヴァルツ卿は『ドイツ出身』として知名度のある私を使いたいだけなんだ」
「そんなことがレニの周りで起きていたのか…」
「大変なんやな、レニも…」
「レニ、つい先日花小路伯爵から聞いたのだけれど…」
「何?」
「シュヴァルツ・カンパニーが賢人機関にも関わってきたみたいよ。いずれあなたの過去も現在も知ることになるでしょうね」
「……ある意味想定内の話でもある。あれほど大きな企業が賢人機関と関わらないわけがない」
「やぁみんな、何を暗い顔をしてるんだい?…ほら、みんなへのプレゼント運んできたよ」
 そのとき丁度ファンから花組に届いた両手一杯のプレゼントを大神が楽屋まで運んできた。色とりどりのラッピングの包みや花など、たくさんのプレゼントが大神の手に握られている。
「ありがとうございます、支配人」
「こんな動きにくい服は私には似合わない、着替えてくる」
「ちょっ、レニどうしたんだいそのドレス!?」
「隊長は気にしなくていい。私の趣味でもなんでもない」
「ちょ、ちょっとレニどーしたですか!?いきなり機嫌悪くなってまーす!!」
「どうしたんだい、織姫君。レニも…なんだかさっきまでの和やかな雰囲気だったのが嘘みたいに…」
 更衣スペースからなんでもない!というレニの声が聞こえた。その場の花組一同はみんな目を丸くして立ち尽くしていた。
「は、は…反抗期なんでしょーか…レニ……」
「なんかちょっと違う気もするけどね…」
 そこから、レニが天使役の衣装を着て更衣スペースを出てくるまで花組の会話は無かった。
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